建設業の見積書で「法定福利費」を内訳明示することが求められるようになっています。これを省くと下請け業者が社会保険料を実質的に負担させられる構造になりかねません。この記事では、法定福利費とは何か・見積書にどう記載するかを解説します。
法定福利費とは
法定福利費とは、事業者が法律上の義務として負担する社会保険料のうち、事業者(雇用主)負担分のことです。
| 保険の種類 | 内容 | 事業者負担の目安 |
|---|---|---|
| 健康保険 | 医療費の保険 | 標準報酬月額の約5〜5.5%(業種・組合による) |
| 厚生年金保険 | 老齢年金等 | 標準報酬月額の9.15% |
| 雇用保険 | 失業・育児休業等 | 賃金総額の約1.1%(建設業の場合、令和7年度) |
| 労災保険 | 労働災害の補償 | 賃金総額の料率(建設業:工事の種類により異なる) |
これらは「かかって当然のコスト」ですが、見積もりに含めないと事業者の手残りから出ることになります。
なぜ見積書への内訳明示が求められるのか
国土交通省の通達(令和3年3月:「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」改訂)により、元請けは協力会社の見積書に法定福利費が明示されているか確認することが求められています。
背景にあるのは、建設業での社会保険未加入問題です。法定福利費が見積もりに含まれないまま工事単価が決まると、下請けが「社会保険に加入するか・手取りを減らすか」の選択を迫られる構造になります。
見積書への記載方法
法定福利費の内訳明示には、大きく2つの方法があります。
方法①:見積書の「諸経費」内に内訳として明示する
労務費 1,200,000円
うち法定福利費 192,000円(労務費の16%)
材料費 800,000円
諸経費 200,000円
合計 2,200,000円
方法②:「法定福利費」を独立した費目として記載する
労務費 1,200,000円
材料費 800,000円
諸経費 200,000円
法定福利費 192,000円
合計 2,392,000円
どちらの方法でも、法定福利費がいくらか分かるように記載することが重要です。
※方法①は法定福利費を労務費に含めて表示するため合計が220万円、方法②は法定福利費を別建てで加算するため合計が239.2万円になっています。法定福利費の金額(192,000円)は同じで、表示方法の違いが合計額の差として現れる形です。どちらで記載するかは元請けとの取り決めや慣例に従ってください。
法定福利費の計算方法(簡易版)
労務費に対して一定の料率をかけることで概算を算出します。
建設業での目安:労務費の15〜16%前後
内訳例(労務費100万円の場合):
- 健康保険(事業者負担):約5.0万円
- 厚生年金(事業者負担):約9.15万円
- 雇用保険(事業者負担):約1.1万円(令和7年度)
- 労災保険:建設業は事業の種類により幅が大きく、0.9%〜6.2%程度(例:一般的な建築事業で約0.95%)
- 合計:約15〜16万円
料率は毎年改定されるため、最新の料率は日本年金機構・厚生労働省のウェブサイトで確認してください。雇用保険料率は令和7年度(建設業事業主負担 約1.1%)時点。労災保険料率は工事の種類ごとに定められており、最新・該当の率は厚生労働省の労災保険率表で確認してください。
一人親方への法定福利費
一人親方は「労働者」ではないため、健康保険・厚生年金・雇用保険の適用対象外です。ただし、一人親方に対して法定福利費相当額の支払いを求める元請けはいないのが実態です(一人親方の分は計上しない)。
一人親方が関わる場合の見積もりでは、直接施工する一人親方分を「労務費」または「外注費」として計上し、法定福利費の対象外として扱います。
まとめ
法定福利費は見積書への内訳明示が求められており、省くと下請けの負担になる構造につながります。労務費の15〜16%を目安に計算し、見積書の費目として明記することが、適正な工事単価を守るための基本です。
本記事は実務情報の提供を目的としたものです。個別の見積もり・経理処理については、税理士にご相談ください。
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