建設業では「売上は上がっているのに資金が足りない」という状態が起きやすい構造があります。その根本は**入金と支払いのタイミングのズレ(サイトのズレ)**です。この記事では、そのズレの仕組みと資金繰り表の作り方を解説します。
「サイト」とは
「入金サイト」「支払いサイト」の「サイト」とは、取引から入金・支払いまでの期間のことです。
| 用語 | 意味 | 建設業での典型例 |
|---|---|---|
| 入金サイト | 工事完了(または請求)から入金までの日数 | 請求月の翌月末〜翌々月末(30〜60日) |
| 支払いサイト | 発注から支払いまでの日数 | 翌月末〜翌々月末(30〜60日) |
入金と支払いが同じサイトでも、工事が先に動いて支払いが先に発生するため、入金が後ろにずれます。
典型的なズレのパターン
例として、6月に施工した工事の資金の流れを見てみます。
| 時期 | 入金・支払いの動き |
|---|---|
| 6月 | 施工スタート。外注・材料の発注が始まる |
| 7月末 | 外注費・材料費の支払い(約300万円) |
| 7月末 | 元請けへ工事完了後に請求書を発行 |
| 8月末 | 入金(300万円+粗利分) |
支払いは7月末、入金は8月末。1か月以上のズレが発生します。これが複数の工事で同時に起きると、支払いが集中する月に大きな資金不足が生じます。
資金繰り表の基本構成
資金繰り表は「いつ・いくら入って・いつ・いくら出ていくか」を月ごとに一覧にしたものです。
| 月 | 期首残高 | 入金 | 支払い | 差引 | 期末残高 |
|---|---|---|---|---|---|
| 8月 | 80万円 | 250万円 | 310万円 | ▲60万円 | 20万円 |
| 9月 | 20万円 | 420万円 | 280万円 | +140万円 | 160万円 |
| 10月 | 160万円 | 180万円 | 220万円 | ▲40万円 | 120万円 |
8月は期末残高が20万円まで落ちます。この時点で「8月はギリギリ」と分かれば、事前に融資の手配や支払い交渉ができます。
Excelで始める資金繰り表のポイント
入金側に記入するもの
- 各工事の入金予定日と金額(請求書の入金日を確認して記入)
- 補助金・助成金の入金予定
- 融資実行予定(ある場合)
支払い側に記入するもの
- 外注業者への支払い(各業者の締め日・支払い日)
- 材料仕入れの支払い
- 給与・人件費(毎月固定)
- リース・ローンの支払い
- 税金・社会保険料の納付(まとめて来る月に注意)
運用のコツ
- 2〜3か月先まで常に記入しておく:問題が起きてから対応では遅い
- 週1回更新する:入金確認・支払い確認のたびに実績値を上書きする
- マイナスになる月を早めに発見する:1か月前には手を打てるようにする
資金繰り表で「危ない月」を見つけたら
期末残高がマイナスになる月が見えた場合、対策の選択肢は次のとおりです。
| 対策 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 入金の前倒し交渉 | 元請けに早期入金を依頼 | 関係性によって難しい場合あり |
| 支払いの後ろ倒し交渉 | 外注・仕入れ先に支払い猶予を依頼 | 信用に影響するため慎重に |
| 短期融資の手配 | 銀行・信金への一時借入 | 余裕があるうちに相談する |
| 不急の支出を遅らせる | 設備投資・経費の先送り | 事業に支障がない範囲で |
まとめ
建設業の資金繰り悪化は「入金より支払いが先」という構造から起きます。損益が黒字でも現金が不足するのはこのためです。資金繰り表を作り、2〜3か月先の入金・支払いを見える化することで、問題を事前に察知できるようになります。
本記事は実務情報の提供を目的としたものです。個別の資金繰り対策については、税理士・金融機関にご相談ください。
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