「うちも健康診断ってやらないといけないの?」「何をいつ受けさせればいい?」——人を雇い始めた建設業の事業主が、よく迷うところです。結論から言うと、労働者を雇う事業者には、労働安全衛生法に基づく健康診断の実施義務があります。そして健診には「一般健康診断」と、有害業務向けの「特殊健康診断」があり、頻度が異なります。
まず全体像を押さえ、次に一人親方本人の扱いを整理します。
一般健康診断(すべての労働者が対象)
- 雇入時の健康診断: 常時使用する労働者を雇い入れるときに実施(労働安全衛生規則第43条)。
- 定期健康診断: 1年以内ごとに1回実施(安衛則第44条)。これが基本。
- 特定業務従事者の健康診断: 深夜業などの特定業務に常時従事する労働者には、配置替え時および6か月以内ごとに1回(安衛則第45条)。
これらは業種を問わず、労働者を使用する事業者の義務です。費用は事業者負担です。
特殊健康診断(有害業務に従事する労働者が対象)
建設現場では、有害業務にあたる作業をする労働者に、特別な項目の健康診断が義務づけられています(労働安全衛生法第66条第2項ほか)。建設業で関わりやすいものを挙げます。
| 種類 | 主な対象作業(建設で関わりやすい例) | 頻度の目安 |
|---|---|---|
| じん肺健診 | 常時粉じん作業(はつり、解体、トンネル等) | 管理区分により1〜3年ごと+離職時(じん肺法) |
| 有機溶剤健診 | 塗装、防水、接着など有機溶剤を扱う作業 | 原則6か月以内ごと |
| 特定化学物質健診 | 特定化学物質を扱う作業 | 原則6か月以内ごと |
| 鉛健診 | 鉛を扱う作業 | 原則6か月以内ごと |
| 石綿健診 | 石綿の解体・除去等 | 原則6か月以内ごと(従事しなくなった後も継続の場合あり) |
いずれも、雇入れ時・配置替え時にも実施が必要です。じん肺は管理区分によって頻度が変わり、離職時健診もある点が特徴です。なお、一定の要件(作業環境測定の結果が良好など)を満たすと、頻度を年1回に緩和できる制度もあります。
一人親方本人はどうなる?
ここが誤解しやすいところです。労働者を雇わず自分ひとりで働く一人親方は、労働安全衛生法上の「労働者」ではないため、事業者としての健診実施義務の直接の対象にはなりません。ただし、次の点に注意が必要です。まず、人を一人でも雇えば、その従業員に対しては上記の義務が発生します。また、義務でなくても、粉じんや有機溶剤を扱う一人親方が自分の健康のために健診を受けるのは、じん肺などの職業病を早期に見つける意味で有効です。元請けによっては、一人親方にも健診結果の提示を求める場合があります。
記録の保存も忘れずに
健康診断を実施したら、健康診断個人票を作成して保存する義務があります(一般健診・多くの特殊健診で5年間、じん肺は7年間など、種類により保存期間が異なります)。「受けさせて終わり」ではなく、記録を残すところまでが実務です。
「誰が・いつ受けたか」を管理する
健診は、対象者ごとに種類も頻度も違います。定期健診は年1回、有害業務の人は6か月ごと、じん肺は数年ごと——これを人ごとに追うのは、人数が増えるほど大変になります。ポイントは、従業員ごとに「次の健診はいつか」を一覧で管理し、期限が近づいたら分かるようにしておくこと。受診漏れは、従業員の健康リスクであると同時に、事業者の義務違反にもなります。
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